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北陸冬季雷観測

北陸地方の気候

北陸地方の冬の気候で他の地域と大きく違うのは、圧倒的に雨や雪が多いことだ。毎日のようにどんよりとした曇り空で、日光を直接浴びることは少ない。

11月にはあまり雪は降らないのだが、12月からはあられと雪が降る機会が増えてくる。冬になると、どこへ行っても長靴を履いた人を見かける。長靴が無いと靴下まで濡れてしまい、凍りつくような冷たさに耐えなければならない。

あられが降ることも多く、一粒1cm以上のあられが降ってくることもある。風が強い日は氷の粒が顔に刺すようにあたる。それだけ、風も強く吹いている。このあられも雷が発生するのには欠かせない。あられが氷の粒と衝突することで、静電気が発生する。いわば、下敷きで髪の毛を摩擦して髪の毛が正電荷、下敷きが負電荷になる現象に似ている。冬の日本海側では、海から蒸気を含んだ暖かい風が持ち上げられ、粒子の衝突がどんどん起こってくると、電荷が雲の中に蓄積されていく。電荷が大量にたまってくると雲内の電界が強くなり、絶縁破壊を起こす程の電界強度に達すると、放電が開始し雲に蓄積された電荷が一気に大地へと流れる。これが、落雷と呼ばれるものである。落雷にも大地から放電が開始するものや雲内から開始するもの、正電荷が中和されるものや負電荷が中和されるものなど多種多様である。


秋の牧場


牧場の馬


冬季雷

北陸地方では冬に雷が発生する。近畿地方では冬に雷が鳴ることはめったにないが、北陸地方では週に数回雷が発生する。冬季雷が夏季雷と比べて大きく異なるのは、落雷による中和電荷量と落雷数である。冬季雷は夏季雷に比べて中和電荷量が大きく、落雷した場所の近くに居た場合、地面が揺れるのを体感できる。また、夏の雷雲がやってくると数百発の落雷が発生するのに対して、冬の雷雲では1発しか落雷しないこともあり得る。

落雷は高い構造物に発生しやすいことが知られている。特に冬季の雲頂は夏季に比べて6km程度低く、構造物の電界が一層強められる。写真にある風車と鉄塔には毎年冬季に10発程度の落雷が発生する。この鉄塔と風車にコイルを巻きつけて磁界を計測することで電流値を推定している。

風車と鉄塔の周りに観測器を設営し、岐阜大学の方々が計測した電流と併せてデータ解析を行い、雷放電現象の解明を目指している。


雪原の奥にたたずむ風車と鉄塔


設営の様子


牧場設置の干渉計


観測の様子

我々の研究グループでは、観測シーズン中はしっかりと観測できるように万全の状態で備え、雷のデータを逃さないことを重視している。シーズン中は観測データをもとに設定を変更したり、ベストな状態で観測できるよう体制を整る。

観測シーズン以外では何をしているかというと、次の観測のために装置の開発や改良も行う。回路の設計や観測システムの見直しも議論していく。設置場所に苦労しないために太陽光パネルで電源供給ができるような装置の設計も行われてきた。設営場所の候補を探して現地で交渉も行うこともある。電波を受信する装置を設営するため、周囲の電波環境が悪いと良い観測結果が得られない。

宿泊やデータ解析をする小屋では岐阜大学の方々と共同生活する。銭湯や食事に一緒に行き、観測器の定常チェックも同行する。シーズン中は小屋に住みつくわけではなく、天気予報を見て帰阪したり再び小屋に帰ったりする。不思議なもので土日や年末年始、クリスマスに雷が来ることが多くこの時期は気が抜けない。


実験の合間に仲間と昼食


港には安くて豪華で満腹になる食事も


データ解析と寝泊りをする小屋


3時を過ぎてくると日が暮れる


研究成果

これまでの研究成果。

  • 正極性落雷について
       ・双方向リーダ仮説の実証
       ・複数の正電荷領域の電荷を中和する正極性落雷の放電路可視化
  • 両極性落雷について
       ・両極性落雷の雲内放電路についての仮説を実証
       ・負電荷を中和しその後正電荷を中和するメカニズムを電荷構造の観点から考察
  • ICCパルスについて
       ・ICCパルスを引き起こす負リーダの観測
       ・ICCパルスより中和に寄与した電荷高度を推定
  • 冬季雷雲の電荷構造について
       ・正負電荷ともに夏季に比べ低高度に分布していることを観測
       ・負電荷は1km以下の高度に空間電荷として分布

どの研究成果も耐雷や雷放電の放電機構を考えるうえで重要な成果となっています。


関連論文リスト

・Yoshida, S., M. Akita, Y. Nakamura, T. Morimoto, T. Ushio, Z.-I. Kawasaki, D. Wang, and N. Takagi Evidence of negative leaders prior to fast rise ICC pulses of upward lightning, J. Atmos. Elec., 29, 1, pp.13-21, 2009. ダウンロードサイト

・Akita, M., S. Yoshida, N. Yoshitaka, T. Morimoto, T. Ushio, Z.-I. Kawasaki, and D. Wang Lightning Channels of Cloud-to-Ground Flashes Neutralizing Multiple Charge Regions Inside Winter Thunderclouds, IEEJ Trans. FM, 130, 5, pp.467-472, 2010. ダウンロードサイト

・Yoshida, S., T. Morimoto, T. Ushio, Z.-I. Kawasaki, T. Torii, D. Wang, T. Takagi, and T. Watanabe High energy photon and electron bursts associated with upward lightning strokes, Geophys. Res. Lett., 35, L10804, 5 pp., doi:10.1029/2007GL032438, 2008. ダウンロードサイト
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