MISSION -背景と内容-


〜背景〜

 宇宙空間からの雷放電観測

・大気の絶縁破壊強度を越えたとき放電という形態をとって、 雲内の電荷が中和される。これを雷放電と呼び、以上を総称して雷放電現象と呼んでいる。 このような雷放電は我々に最も身近な自然現象の一つであるにもかかわらず、 全地球規模での発生頻度や分布といった最も基本的な描像について、長い間明らかになっていなかった。 現在、雷放電の継続的な観測を行うことが、世界的に緊急の課題となっている。また、宇宙空間からのVHF 干渉計観測を実現することによって、初めて、全球的に発生する雷放電の放電進 展過程と、EMP(ElecroMagnetic Pulse)放射過程を推定することが可能となり、これを実現するために世界各国が競争を繰り広げて いる。

雷雲地上間放電に伴う高高度放電発光現象

JEM
雷雲上空で発生する過渡的な発光現象の存在は、1989 年に米国のR. Franz らによって初めて確認さ れた 。しかし、”何がスプライトの発生条件を決めているのか”という根本的な問題は、1989 年のスプライトの発見 から現在に至るまで、未解明の問題として残されたままとなっている。
高高度放電発光の発生メカニズムの解明で重要なことは、先行して起こるCG や雲内放電との位置関係や、ス プライト自身の水平構造を詳細に調べることであり、そのためにはスプライトと雷放電を衛星軌道上から天底観測することが本質的である。

地球ガンマ線と雷放電起源の逃走電子
 
Gamma 地球起源のガンマ線放射が存在するという衝撃的な事実は、ガンマ線天文台(CGRO)衛星に搭載されて いるBATSE(Burst and Transient Source Experiment)によって1994 年に初めてもたらされた。図は、白色×印で示されるRHESSIで観測された地球ガンマ線発生分布と、赤色コンターで示される雷放電の発生頻度分布を表している。これらを比較すると、 地球ガンマ線の発生は雷多発域上空に集中していることが明らかである。
Gamma2
地球ガンマ線の発生源とメカニズム明らかにするためには、雷のどの放電プロセスと地球ガンマ線とが相関しているのか を検証することが唯一の方法である。

〜JEM-GLIMS ミッションの目的〜

(1) 全地球規模の雷放電および高高度放電発光現象の時間空間分布の解明

JEM-GLIMSでは、光学観測機器による夜側での過渡発光の検出、およびVHF干渉計による昼側・ 夜側での雷放電電波の検出を行う。これによって、雷放電と高高度放電発光現象の全球的発生頻度 分布を世界で初めて定量的に特定することを目的とする。この全球発生頻度分布に、高高度放電発 光による微量気体生成の数値計算結果を組み込むことによって、雷放電および高高度放電発光現象 が地球大気組成変化に対して及ぼす影響を定量的に解明することができると期待される。

(2) 高高度放電発光現象の水平空間構造の解明

JEM-GLIMS では、2 台のCMOS カメラと2 台のフォトメータによって、雷放電および高高度放電発 光の光学天底観測を行う。さらに世界で初となる宇宙空間からのVHF 干渉計観測を行う。これによっ て雷放電路の時間空間発展と、高高度放電発光の水平空間構造を明らかにし、雷放電水平電流とそ こから放射されるEMP が高高度放電発光の発生条件に果たす役割を特定することを目的とする。こ れによって、スプライトの発生メカニズムとして主流とされてきた数々のモデルに対し大きな修正を迫る とともに、これまでに無い新たな発生メカニズムを確立すると期待される。

(3) 高高度放電発光現象の近紫外域における発光スペクトルの解明

JEM-GLIMS では、グリズム分光器を1 台搭載し、高高度放電発光の近紫外域における分光天底観 測を行う。これまで誰もなし得なかった、1ms という高い時間分解能で定量的な近紫外域のスペクトル 観測結果を世界で初めて得ることを目的とする。特にN2 2P バンドとN2+ 1N バンドの発光スペクトル の精密観測から、発光を引き起こす電子のエネルギーを特定することによって、電子の分布関数の推 定と電子加速メカニズムの妥当性を評価できると期待される。

(4) 地球ガンマ線の発生起源の解明

JEM-GLIMS では、光学観測機器とVHF 干渉計を駆使し、地球ガンマ線を引き起こす雷放電の特 性を明らかにする。JEM-GLIMS で得られる地球ガンマ線生起雷放電のプロパティと、ASIM, TARANIS で得られる地球ガンマ線データから、地球ガンマ線が雷放電のどの放電プロセスで発生し たのか、発生起源はどこにあるのか、そもそも地球ガンマ線の起源は雷なのかということを、世界で初 めて解明すると期待される。

 〜JEM-GLIMS 搭載器機〜

本ミッションに搭載予定の機器は、CMOSカメラ,フォトメータ,グリズム分光器,VHF波帯広帯域干渉計 の4種のセンサーである。
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-CMOSカメラ-
BMWJEM-GLISMでは、雷発光と高高度放電発光を天底観測する。スプライトは雷放電発生後に約1 ms程 度の遅延時間をもって発生することから、ビデオフレームレートで画像取得するカメラを用いた天底撮像観測では、両者を時間的に分離することができない。しかし、異なる観測波長帯を2台のカメラによって撮像観測 することで、これらを分離することが可能となる。


-フォトメータ-
BMWCMOSカメラでは、スプライト発光の発生形態を撮像観測するが、これとは別にスプライトの発光強度を測 光するフォトメータもJEM-GLISMでは搭載する。CMOSカメラでは2-34 msの時間分解能で撮像観測を行 うが、フォトメータではより高速の100 kHzサンプリング、10 μsの時間分解能で測光観測を行う。


-グリズム分光器-
BMWスプライト発光の近紫外域の発光スペクトルを取得するために、グリズム分光素子を用いたイメージング分 光器をJEM-GLISMに搭載する。JEM-GLISMにおけるスプライトの分光観測では、300-400 nmの領域を2 nmの波長 分解能、1 msの時間分解能で、50空間ピクセルを同時に観測するイメージング分光器とする。波長分散に はグリズム(透過型回折格子)を用い、小型軽量化を実現する。雷とスプライトの発光を弁別して分光観測する ため、1 ms程度の高速サンプリングを行う。画像データレートのトレードオフのため、空間分解能、波長分解 能を緩和している。10 km空間分解能の雷雲からの雷発光、スプライト発光などの全体的な分光観測を行い、 電子温度の推定を目的とする。


-VHF広帯域干渉計-
・VHF 干渉計は、雷雲内での放電路を多次元で再現することが可能であり、雷放電の物理的過程の同定や位置標定を行うことが出来る。 このVHF 帯の電磁波動は電離層のプラズマ周波数より高いため、衛星高度からも観測が可能である。JEM-GLIMS MISSIONでは、2台のVHFアンテナとデータ処理エレクトロニクスを開発し、搭載する。 また、アンテナはパッチ型のアンテナとし、ポート共有利用実験装置の底面に取り付け天底方向を指向するように設置する。
JEM
JEM-GLIMS では、VHFアンテナを2 台搭載することにより、初めて宇宙 空間からの干渉計観測を実現する。これによって、雷放電の放電進展過程を場所や時間を選ばずに定常的 に観測することになり、大きなマイルストーンとなる。

BMW ・観測する周波数は30-100 MHz帯とする。混載実験装置内部にはデータ処理用のエレクトロニクスを設置する。このエレクトロ ニクスでは、パッチアンテナから受けた信号をサンプリング周波数が200 MHz、分解能が8 bitでA/D変換し て記録する。